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作業プランニング研修を開催しました。

10/9-12の4日間で、林業人材育成研修のひとつとして作業プランニング研修を開催しました。

林業は段取り8割と言われています。
林業、とくに木材生産事業を行うにあたっては、木を伐る技術と同時に、どのようなプラン・段取りで作業を実行するか事前に計画することが非常に重要になります。
また、工場と違って森林は作業を行う現場それぞれで地形などの条件が異なり、その場所場所に応じて最適な作業方法・手順を組んでいく必要があります。

今回の研修では、どういった考え方で作業プランを組んでいったらいいのかを実際の現場を見ながら学びました。

講師は、愛媛県指導林家の菊池俊一郎さんです。

菊池さんは、愛媛県西予市でみかん農家と所有山林での林業を行う自伐林家です。少ない面積でしっかり利益を出していくために追求してきた森林経営の考え方について、教えていただきました。

講師の菊池俊一郎さん

作業プランニングの内容を分解すると

  • その森にどれぐらいの木材があるか
  • そこからどれぐらいの生産量が見込めるか
  • 地形に応じてどういった作業プランを組むか
  • それに応じてどういった機械を用意するか
  • 全体で何日かけられるか
  • 以上から、どれぐらいの収支を見込めるか

といった思考手順になります。

これは一般的なビジネスであれば見積り作成として当然踏む手順なのですが、林業ではそれをすっ飛ばして、とりあえず作業してみて出たとこ勝負になっている、と厳しい指摘がありました。
規模の大小にかかわらず、これらの手順をきちんと考えて生産活動をしていくことが、「儲かる林業」につながる第1歩となります。

1.生産量を見積もる

まず初めに、作業対象となる森林内にどれぐらいの木材があるか(蓄積量)を計測します。
測量器具なども用いて、木の太さ(胸高直径)と高さ(樹高)、本数を測りました。標準地調査というものになります。そこから全体にどれぐらいの木材があるかを概算します。

はじめはこうした計測をきちんと行う必要がありますが、段々慣れてくると推測できるようになり、ぱっと見で蓄積量が分かるようになってきます。
ここから、何割ぐらい伐り出してくるか(間伐の場合、標準的には3割)と木材の平均単価を考慮して、だいたいの売り上げが見えてきます。

今回の研修地は、実際に間伐作業を行っていた現場でもあったので、一本伐ってみて実際の樹高を計測しました。
そこで、丸太に切り分ける造材作業についても詳しく解説していただきました。

「造材」は、林業経営を大きく左右する大変重要な作業になります。
木材の丸太は、太さと長さによって単価が異なります。20mほどの長さの木をどこで切るかによって、全体の価格は大きく変わってきます。時には2000円も3000円も変わります。一本当たりの数値は小さくてもそれが何百本と積み重なっていくと、売り上げにも大きく影響します。
多少の手間がかかっても、めんどくさがらず最適な造材を行うことが、儲かる林業には不可欠です。

2.様々な作業プランを検討する

今回の研修では、4日間のうちで3つの実習地を回りました。
それぞれ異なる地形条件となるため、その場に応じた作業プランを考えていく必要があります。

1カ所目で、生産量の見積りについて重点的に研修をおこなったあと、2カ所目ではとくに作業プランの考え方について学びました。
地形図と現地を見ながら、対象地全体を同じ方法(作業システム)で生産するのではなく、いくつかのエリアに分けて最適な作業方法を考えます。

また、キャッシュフローも含めて考えることが重要です。
機械が侵入していく作業道を開設していく場合、作業道開設中は木材を生産しないため、お金の入りはありません。はじめに既存の道がついている周辺部で売り上げを作っておいてから、作業道を開設して全体に手を付けていくということもひとつの考えだと教えていただきました。

作業システムひとつに固執するのではなく、地形や森林の条件に応じて柔軟に作業プランを組む発想がなにより重要です。

集落近くの山林の取扱い

最終日の実習地は、集落の裏山にあたる場所でした。ここは土砂崩れ等が起きたときに人的被害が発生する可能性が高いため、砂防指定地や土砂災害警戒区域などの災害関連の指定地になっている場所でもあります。
こうした場所は、収益性以上に災害発生リスクを考慮した取り扱いを考える必要があります。
そうなるとそれまでの2カ所の実習地とは木の切り方も作業の仕方も変わってきます。集落から近いというのは通勤距離や木材の運搬距離も短くなるため、作業はしやすいと思いきやそういったリスクも考慮して作業をしなくてはいけません。
こういった現場については、作業を請けるか否かも含めて慎重に考える必要があるということが指摘されました。

儲かる林業による効果

今回の研修では、「どうやったら儲けられるか」ということが再三指摘されました。
これは、林業が経済活動である以上当然のことですし、事業を継続していくためには避けられないものです。
ただ、それ以外にも大きな効果として、安全性の確保につながるということが言えます。

見積り、プランニングの段階で1日ごとに生産目標も見えてきます。
当然それ以上に生産できれば利益は増えるということになりますが、林業は全産業の中で死傷者数の大きい危険かつ労働負荷の大きな産業だということを考慮すると、一日一日の作業を無理なくゆとりを持って実行できるかが安全作業に必要だと分かります。
無理な生産目標だとどうしても安全確保のための手順を抜かざるを得なくなり、それが結果的に事故につながります。
見積りとプランニングができていないと、一日ごとの目標も見えていないため、「できるだけ多く」という発想になり、毎日が無理のいく作業になりかねません。
仕事の選択も含めて、森を正確に見積もる力は林業経営の持続性には必要不可欠です。

以上、今回ご指導いただいた内容をかいつまんで紹介しましたが、その他に、木の見方や補助金について、林業機械の使い方など様々な観点のお話をしていただきました。
小規模でやる場合、木を伐れるだけでなく、林業経営のためのプランニング、マネジメントの能力も必要だという指摘は地域おこし協力隊を含めて新規に参入してきた方々には重い言葉だったのではないかと思います。
今回の研修が、自分たちの仕事を見直すきっかけになったのではないかと思います。

参加者の皆さんから以下のような感想をいただきました。
「いろいろな考え方や技術を学んだことで、今まで行なっていた、自分の作業工程を見直す、良いきっかけになった。 興味深い内容が多く、話がとてもわかりやすく、大変勉強になった。」
「いくつかの山を菊池さんの解説を聞きながら見ることで、それぞれの違いや気にすべき点を確認することができました。複数の山を見比べられる機会は少ないので、非常に参考になりました。」
「林業は、儲からないを前提に考えて居ましたが、やり方次第としっかり損益を考えれば利益を残せる事を知る事ができ実行したいと感じた。」
「採材するときの考え方や、ただ単に切って出すだけではないというシンプルでありながらもお金を稼ぐことの重要性をひしひしと痛感しました。」
「作業道ありきで施業をイメージしていましたが、架線など多様な技術の特長を理解して使い分けることが重要だと分かりました。以前に受けた架線の研修も踏まえ、架線に対するモチベーションが上がりました。 施業プランと作業プランの違いや、事前のプランニングの重要性が理解できました。」

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