架線基礎講座を開催しました
8/21-22の二日間は、架線基礎講習を開催しました。
木材を収穫する方法として、架線集材(かせんしゅうざい)という方法があります。
道から遠いところの木材を、ワイヤーを張ってロープウェイのような形で吊ったり引っ張ったりしながら集めてくる方法です。
嶺北地域のような急峻な地形が広がっている地域では、道路を山林内に設置することが難しいため、架線集材の技術が発達してきました。
ただ、作業コストが高いこと、複雑で難しいこと、危険性も高いことなどから架線が使える技術者の育成が急務となっています。
架線集材の模式図はこのようなものになります。
複数本あるワイヤーのそれぞれの役割、器具について知る必要がありますし、実際に設置するにあたっては強度計算などが必要です。また、上の図のような単純化した設置方法はあり得ず、現場の地形に柔軟に対応して最適な設置方法を選択する必要があります。
最終的には現場での経験がものをいいますが、現場で作業を体験するだけでは非常に理解しづらいのもたしかです。まずは机上で、原理的な話を学んだ上で現場に入れれば理解度は高まります。
架線の技術は複雑なため、一朝一夕に身に着くものではありませんが、基本的な知識や考え方を身に付けることで、架線技術へのハードルを下げることが今回の目的です。
講師は高知県森林技術センター森林経営課長の山﨑敏彦さんです。架線現場にも多く足を運び、基礎研究から応用技術について現場技術者や機械メーカーなどと交流してきた架線のスペシャリストです。
架線の基本を知る
はじめに座学として、架線集材の重要性と基本的な原理について詳しい説明がありました。
架線の張り方には様々なやり方がありますが、その原理をしっかり知っておくことで適切な方法の選択ができ、応用の幅も広がります。
図と模型を用いて、最も簡易な架線集材の方法からH型架線といった複雑な方法までを学びました。
大規模な方法も小規模な方法も基本的な考え方は同じで、両者を学ぶことでより理解を深めることができました。
視覚的な教材のおかげで、難しい概念も理解しやすかったようです。
実践的な学習として、実習棟にある屋内架線シミュレーターを使った実習を行いました。架線にかかる張力をリアルタイムで体験し、数値として見ることで、配慮するポイントなどを具体的に学ぶことができました。
また、架線集材に使用される多種多様な器具についても説明がありました。これも実物を見ることで、それぞれの使用方法と特徴を理解することにつながりました。
また、架線の設置には法律上で指定されている細かいルールがあります。それをひとつひとつ身に付けるには、架線作業主任者資格を取得する必要がありますが、こうした内容のものがあると知っておくと、現場で見聞きしたときの対応しやすくなるのではないかと思います。
最後には自走式搬器(ラジキャリー)の架設方法が動画と図で解説されました。今後の現場での研修に繋がる内容となったと思います。
架線技術は非常に応用の幅が広く、細かい現場での対応と工夫によって成り立っています。今回学んだ基礎を踏まえて現場での指導を受けることで、自分の技術を磨いていただきたいです。
参加者へのアンケートからは以下のような感想をいただきました。
「架線のみにとどまらず道具についても実物を踏まえ丁寧に説明いただいた。」
「架線の話に限らず、付随する林業のことのお話もあり大変勉強になりました。」
「大掛かりな架線のことのみならず、ラジキャリのような小型の架線についても教えてもらえ、小規模林業に即した学びとなったのが大変ありがたかった。」
「理論と実際の動きを同時に見れた事が分かりやすかった」
「架線集材の基礎という点で、基本的な考えやシステムを実体験を交えて網羅的に教えていただきつつ、ワイヤーにかかる張力といった見えづらい部分を体感でき、新たな気づきがありました」
「架線の設計理論や控え作をどう取っていくなどの細かい所を知れて良かった」
「模型を使っての架線の説明は、イメージが付きやすくわかりやすかった。」