造林学講座を開催しました
6/24-25の2日間で、地域の林業者向けに造林学講座を実施しました。
造林学とは、樹木を植えて、育てて、収穫するまでの一連の作業に関する学問で、林業をしていく上での基礎的な知識となります。
樹木は自然物である以上、樹木自体を見ることに関わらず、土壌や水や気象といった周辺環境の影響も無視できませんし、それらを踏まえて人間がどのような作業をしたらどのような反応を示すかを、ある程度想定した上で森を作っていく必要があります。
今回はそうした造林学の中でも、特に「間伐」という作業に重きをおいてレクチャーをしました。
講師は、もりとみず基金スタッフの立川真悟です。
1日目
1日目は、導入で今回の講義の概要と目的を確認したあと、さっそく実習地の山に入っていきます。
今回のテーマは「森への解像度を高める」ということで、講義を受ける前と後でどれぐらい森を見る視点が変わっているかを感じてもらうために、まず初めに現場に行きました。
はじめの実習としては、「何でもいいから観察したもの、気付いたことについてメモしてください。」ということで課題を与え、自由時間を設けて森を観察してもらいました。
その後集合して、何が観察できたかを共有します。
- 生えている樹種やその状態
- 場所による成長の違い
- 曲がりの有無
- 上層木以外の樹木、ササやシダやコケ
- 土壌の状態
- 傾斜や地形
- 動物のフン
- 今後の作業の方針
など、様々な観察の結果が得られました。
その後室内に戻って、講義をスタートします。
- 樹木の成長の特徴
- 土地の肥沃度(地力)と樹高成長の関係性
- 葉っぱの量と肥大成長の関係
など、樹木の成長を要素に分けて細かく解説していきました。
特に、「樹冠」という樹木の葉っぱが付いている部分のサイズが太くなる方向の成長を左右するということは重要な知識です。
木材を生産するために、間伐時にはどうしても幹の状態(真っすぐが曲がっているか)を見てしまいがちですが、今後育てていくために残す木についてはその樹冠の状態をきちんと把握することが重要です。
樹冠の形の決まり方や樹冠の形状のコントロール方法なども含めて、樹冠に注目する重要性について協調をしました。
また、森の混み合い度の指標として、形状比、樹冠長率、収量比、相対幹距比の4つを紹介しました。
それぞれの指標の測り方や特徴を踏まえて、その時々で適切な指標を活用することを解説しました。
2日目
2日目の午前中も引き続き座学を行います。
1日目の基本的な内容を踏まえて、具体的な間伐の作業の解説に入っていきます。
ここで強調したのは、間伐の方法に正解はないということです。
森の現状とどんな森にしたいかによって、間伐の方法や手入れの仕方、必要性の有無は変わってきます。
例えば、木材生産を進めていく山と、環境的な機能(水のための森)などでは若干手の加え方が異なります。また、木材生産の山でも、収穫した木材の林齢やサイズによって間伐の仕方は変わってきます。その他、同じ目標でも尾根部と谷部では方法を変える必要があります。
そうした理論も持ったうえで、そして間伐を実施する際に、「なぜそのような間伐・選木をしたのかを説明できること」が重要だと伝えました。
間伐することによる森の反応について整理した上で、上層間伐や下層間伐、列状間伐といった複数の間伐方法について紹介します。
また、立川が見聞きしてきた様々な間伐の考え方についても紹介をしました。
そうした解説を行った後に、再度実習現場に出ていきます。
まず初めに初日と同様に、ひとりひとりで観察の時間を設け、講義を踏まえてどのような森の情報が見えるようになったかを確認していきます。
観察結果の共有をすると、初日には注目していなかったポイントがかなりみられるようになっていました。
選木実習
その後、3班に分かれて複数個所で伐る木を選ぶ作業(選木)をしてもらいます。
所有者の意見として、景観をよくしたいという意見も踏まえながら、それぞれの班でどういった森にしていくためにどういった選木をすべきかを参加者同士で議論します。
講義部分で解説した通り、間伐・選木には正解がないので、どのような目的でどのような作業をするかということが説明できればひとまずOKです。
その説明を受けて、さらに見えていなかったポイントについては立川から追加のアドバイスも行いました。
実習後、最後に振り返りとまとめを行いました。
まとめとしては、なにより観察が重要だということ、今回の講義内容を踏まえたうえで自分が手を入れた現場をその後も訪れて観察を繰り返すことで森への解像度が高まっていくという、森づくりに大事な視点について改めてお伝えしました。
森の変化はゆっくりとしており、長いお付き合いの中で森も人も成長していきます。
そうした時間感覚を大事にして、森と向き合っていってほしいです。
参加者の皆さんへのアンケートからはこんな声がありました。
「木の個体として備わっている性質が、山林の環境下において様々な外部要因から影響を受けた時にどのような反応を示すのか、その傾向を大枠で捉えることが出来ました。」
「非常に分かりやすい内容で理解しやすかった。 講義前と講義後での現場実習は、山の見方が変わって面白かった。」
「山の見方が変わるほど沢山のことを学ぶことが出来と思う。」
「スギやヒノキなどの間伐の仕方について深く知ることができた」
「原理、原則から学べての現場実習でより知見が増えた」
「間伐の選別基準が自分の中で理由付けができるようになったこと、植物の育成について知れたこと、考えるだけではわからなかったことが教えてもらえて理解が深まった」