樹木の生理・生態講座を開催しました。
5/20(月)に、林業人材育成研修として「樹木の生理・生態講座」を開催しました。
講師はアーボリスト・樹木医として全国で活動する宇治田直弘さんです。
林業をする上で、樹木がどのような構造をしていて、様々な環境や現象に対してどのように影響を受けるのかという、樹木個体に注目することはとても有益です。そういう意味で林業者が樹木医から学べることは多くあります。
樹木医の視点で樹木を向き合う経験を通して、より深く林業や森づくりについて知ることを目的に今回開催しました。
嶺北地域内外から30名近くの参加者がありました。参加者の中には、林業に携わっている方からアーボリストとして活動する方もいらっしゃいました。
はじめに各参加者の自己紹介として、参加者それぞれが好きな虫について答えていただきました。
樹木の講座なのになぜ虫?と参加者も思ったかもしれませんが、講師の宇治田さんから「虫と樹木は相互に関係しあって生きているので、それを意識してもらうために聞きました」という解説があり、樹木単体を見ているだけでは足りないということが分かりました。
その後、学校の生物の授業で習ったような植物、樹木の分類や構造に関する説明が行われました。
針葉樹、広葉樹、双子葉類、単子葉類、年輪、心材、辺材、形成層、樹皮といった基本的な内容から解説いただき、改めて樹木についての理解が深まりました。
樹木のボディランゲージを読み取ろう
そこから段々と実際の樹木を見ていく作業になりました。
樹木自体は当然話せませんが、それが生きている環境に対する反応や内部の状態などを外からの見た目に表現させています。
それは「ボディランゲージ」とも表現され、樹木医はそうした状態を観察して樹木を診断します。
例えば根の状態、根元のふくらみ、枝の付き具合などがそれにあたります。
こうした細かい状態をつぶさに観察することで、現在の木の状態や今後の成長度合い、場合によったら材の質などを推測することができます。
生えている環境(立地環境)に注目
今回の会場は本山町にある帰全山公園でしたので、公園内にある樹木をそれぞれ観察していきました。
個別の樹木の状態と共に観察の際に重要になるのが、それが生えている環境です。
水分の状態、土壌の状態、周りの木との競合状態なども見ていきます。
公園であれば特に人が歩く道の近くは土が踏み固められるので、樹木の成長に対しても多少の悪い影響があります。
現在生育している樹木だけでなく、新しく植える樹木についても言及がありました。
樹木や植物の多くは土壌の中で菌と共生して生息しているので、現在土壌の中に生息している菌との相性が新しく植えた樹木の今後の成長に大きく影響します。山引き苗などを活用する際も、以前の生息環境と新しく植える場所での菌の状態などを考慮する必要があります。
厳密に菌の種類を調べることは非常に困難ですが、樹種ごとに共生する菌の分類は決まっているので、そうした各樹木の個性をよく知ることが、森づくりや樹木管理にはとても有益になります。
これは公園だけでなく、例えば山林での樹種転換の際にも留意すべきポイントだと感じました。
以上、簡単に講座全体を振り返ってみました。
林業の領域と樹木医が多くを占める造園の領域はあまり交流のない分野ですが、樹木医が持つ樹木や自然環境に対する知識や視点は森づくりに非常に有益な情報をもたらします。
また、樹木の内部構造や環境に対する反応については、今後実施する造林学研修にもつながる基本となる知識にもなります。
今年度第1回目の講座として大変有益な内容の講座になりました。
参加者の声として以下のようなものがありました。
「樹木を見る視点が増えた。」
「危険木の判断等、新しい知識を得ることができた」
「樹木の生理生態の基本と、実際に木を観察して具体的にその木の状態を見ることを通して、どういうところに注意して観察し考察するか学ぶことができた。」